「それはひとえに、彼が私を信頼してくれたゆえの行動だったと受け取っています」


「だったら、兄貴が親父のこと信じてなかったみたいじゃんか!」


「きっと、そうだったんだよ」


「先生……!」


「言っただろう? 宗雄さんは君たち親子を置いて行ったひどい人だ。

 たとえ腕のいい医者であろうとも、家族を大切に出来ない人が患者を大切に出来るはずがない。隼斗くんはそう考えた」


「じゃあ、親父が出て行った理由って何なんだよっ!」


「……それは……」



 そこで初めて、八神さんが口ごもる。



「八神さん、私は部外者なので詳しいことはわからないんですけど、逆にそれでわかったことがあります。

 客観的に見て……ちょっと言い方が悪いですけど、本当に城ヶ崎が宗雄さんのことを嫌っていたのなら、どうしてついて行ったのでしょう?」



 答えはない。


 もう少し、慎重に踏み込んでみる。