恐る恐る院長室に足を踏み入れる。
真剣な面持ちの八神さんが、私たちを出迎えた。
「……よくいらっしゃいました」
視線は少し俯き気味、目も腫れている。
寝不足なのだろうか。
彼は私たちに座るよう促し、最後に向かいのソファへ腰を下ろす。
「事情は聞きました。昨日のことも、セラさんのことも、隼斗くんのことも。
その上で率直に申し上げます。今回の一連の事件について、私には思い当たる節がありません」
「この期に及んでまだそんなこと言うのか!?」
「本当に知らない。だから言えない。それだけだ」
「何も知らないことはないはずです。城ヶ崎は事件の際、あなたに救急を要請したと被害者の方が言っていました。
現場からお父さん……宗雄さんの病院のほうが近いにも関わらず、です」
「彼が被害者の方にリスクを負わせてまで八神さんに助けを求めた理由は、何なんですか?」
若葉くんと私の問いに、八神さんは息を吐きながら答えた。