……それでも。
『辛いことがあるなら、独りで抱え込まないで! あなたは独りじゃないんだよ!』
こんなとき、決まって聞こえてくる声に欠片でも勇気をもらう。
母はいない。
弟は自分が傷つけた。
父は、最初からいやしない。
なら、祖父母とこの家を守ることができるのは、自分しかいない。
足掻く力を。
「何とでも言いやがれ! この家で、俺の前で、お前らの好き勝手にはさせない!」
父という皮を被った狸が顔をしかめる。
その後ろで、男たちが面白そうにニヤつく。
そのうちの1人が、進み出てきたとき。
パシッ!
甲高い音が鳴り響いた。
正面だけを見据えていた俺への、背後からの不意打ち。