「やっとお目覚めね。おはよう、隼斗くん」
閉ざされた扉の陰が揺らめく。
窓から射す不気味な赤い光を浴びて、女が姿を現す。
「来んな、変態」
「あらあら、うなされてたから心配になって来たのに。も~」
唇を尖らせた後、まんざらでもなさそうに口角を上げる。
「これでも本気で心配したのよ。あたし」
いつもとは違う言いっぷりに気を取られているうちに、それは起きた。
ヤツが目の前で笑みを消したと思ったら、グッと身体が引き寄せられた。
倒れ込んだ先は、化け猫の腕の中。
「あんまり無理しちゃダメよ?」
「……な!」
振り払おうとしたのに、なぜだろう、力が入らない。
「ほーら、こんなに弱ってるのに。生まれたばかりの雛鳥みたい」