……耳を塞ぎたい。


 目を覆ってしまいたい。



 何かが軋む音。


 闇に散る鮮烈な赤。


 たった1歩先で繰り広げられている光景は、まるで地獄絵図だった。



 ――……め、ろ……。



 蚊の鳴くよりか細い声が、のど元からせり上がってくる。



 ――やめてくれ!!





「――――――ッ!!」





 声にならない自らの悲鳴で飛び起きる。



 額からは玉の汗。


 Tシャツが身体に貼り付き、気持ち悪い。


 指先は震え、動悸がする。



「夢……か……」



 知らず知らずのうちに、布団の端を握り締めた。