「……なんでタダ先生のこと、そんなに嫌がるんだよ」


《それは……》


「言えねぇんなら、簡単に人のことけなすな。もういいだろ。切るぞ」


《っ! 待て、郁人!》



 その声があまりに切羽詰まっていたから、離しかけた受話器を耳元に戻す。



《……最近、この付近で暴行事件が多発していることは知っているな》


「ああ。それで?」


《実はその事件、うちの病院の近くで起きているものが多いんだが……おかしいんだ》


「何が」


《うちに、患者が来ない》


「……は?」