思えば私は、考えごとをしていたんです。

 ごくごく普通の生活をしているにも関わらず、寺元先生にやたら怒られるのはなぜか? とか。


 それが、今はどうでしょう。

「先生に呼ばれてるんだけど」と若葉くんに呼び留められ、理由も明かされないまま化学室に向かっているなんて。

 しかも。



(……もしかして、怒ってる?)



 1歩先を行く若葉くんの黙り具合が、尋常じゃない。

 どう声をかけるべきか困惑しているうちに、入口まで辿り着いてしまった。

 すると――



「お邪魔します!」



 スパァアン! とスライドドアを開けてずんずん中へ入って行く若葉くん。

 私たちに気づいたのか、教卓のそばにいた男性が手元の閻魔帳から顔を上げた。