『……郁人。少し、いいか』


「……何だよ」



 聞き返すと、妙な沈黙の後、張り詰めた声音で口を開く。



《お前、八神という医師を知っているな》


「……モロ知ってるけど、それが?」


《その男とは、今どうしている?》


「どうしてるって……この間久しぶりに世話になったけど、おととい退院してそれっきりだ。何だよ」


《郁人、よく聞け。もうあの男とは関わるな》



 ……耳がおかしい。


 今度は耳鼻科にでも行ったほうがいいか?



《体調が悪いときは俺が診てやる。別の医者は必要ないだろう》



 ……聞き間違いでは、ないようだ。