身体を折っていた男は、立ち上がるなり一目散に逃げ出す。


 その背が闇に紛れてしまうのはあっという間のこと。



(解放、された……?)



 緊張感が切れて、身体から力が抜ける。


 崩れ落ちる私を、引き締まったたくましい腕が支えてくれた。



「ケガはないな」


「わかば、くん……わたし……わたしっ!」


「大丈夫だ、俺がいる。もう怖くない」



 とても優しい声音に安堵を覚え、さらに泣けてきてしまった。


 時を忘れて泣きわめく私を、若葉くんはキツくキツく抱き締めてくれていた。