「威勢のいい女だ」



 男が馬乗りになって、両腕を押さえつけている。



 ……やだ、怖い。



 見知らぬ男に乱暴に押し倒されて、それからどうなるか。


 ……想像しただけで吐き気がする。



 ……やだ、怖い。


 やめて。やめてよ。



 涙腺は崩壊した。


 視界が完全にぼやけて、男の顔もわからない。


 想像したくもない。


 男がどんな顔で私を見ているのかなんて……。



「……たす、けて……」



 掠れた声はひどくか細く、誰に聞こえるわけでもない。


 でも嫌だった。


 絶対、こんなの嫌だ……!


 余力のすべてを使って、叫ぶ。



「助けてっ! 若葉くんっっっ!!!」



 その叫びは夜の闇に響き渡り、





「何言ってやがる。馬鹿が」




 ……絶望にも似た感覚を覚える。