――身体を、強い力がさらう。


 驚き硬直した一瞬の隙に、どこからか伸びてきた手が口を塞いだ。


 振り返ろうにも、顔を固定されている。



「……んんん~!」


「大人しくしろ!」



 私を押さえつけようとしてか、男の腕が腰に触れたとき、全身を戦慄が走った。



「いやぁっ!」


「ぐっ……!」



 とっさに出た肘鉄が相手を直撃。


 拘束が解ける。



 見ると、男が腹部を押さえてよろめいているところだった。



 あ、運よくみぞおち入ったかも。


 ……なんて悠長なこと思ってる場合じゃなくて!



 男が顔を上げる。


 暗くてよくわからないけど、ものすごーく怒っている様子が感じ取れた。



 やばい?


 これやばいよね?