「……俺は弱い。アンタを守ってやることができない。だから、少しでも危険事に頭を突っ込んでほしくない」


「郁人くん、私を守ってくれようとしたの?」


「……笑えるだろ。若葉の足下にも及ばないクセに」


「あのね、若葉くんと比べることのほうが間違ってると思うの」


「そうだよな……俺じゃ話にならないよな」


「そうじゃなくて。聞いて、郁人くん」



 私は丸くなった郁人くんの背に手を添え、横顔を覗き込んだ。



「人には向き不向きがあって、若葉くんは運動が超得意、郁人くんは勉強が超得意でしょ?

 私はどっちも人並みだけど、何かに秀でてるってすごいことよ。だから、自分のできることをすればいいんじゃないかな」