明かりはついているものの、リビングで動くものはない。
「ただいまー……郁人くん?」
返事がない。
テレビに集中しているのだろうか。
「郁人くん!」
もう一度呼ぶと、ビクッと肩を震わせ、ひどく驚いた様子で振り向いた。
「あ……セラ、早かった、な」
「…………」
「何だよ、俺の顔なんかついてる?」
「郁人くん、また無理してるでしょう?」
「してないって」
「じゃあ、どうしてぼんやりしてるのかな?」
「は? 俺のどこがぼんやり……」
「貸してっ!」
「うわっ!?」
郁人くんからテレビのリモコンを奪い取り、電源を切った。