部屋は静まり返っていて、どこからか線香の香りが漂ってくる。
子供の頃の記憶はほとんどないから、ここに来るのも初めてのようだ。
応対してくれたのは祖父。
何も言わず俺を客間に案内し、出て行った。
それからずっと待たされている。
無意識のうちに拳を握った。
緊張、してるわけじゃないと思う。
お守りを取り出し、拳の代わりに握る。
それだけで少し落ち着いた。
澄み切った蒼色が、今日の空のようだった。
母は、そこを自由に流れる彩雲のようだった。
きっと空から見守ってくれている。
だから、大丈夫。
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