このままでは風邪を引いてしまうから部屋に戻らなければならない。


 そうは思うが、理不尽な情勢に、どうせなら引いてしまえと半ばヤケになる。


 そうすれば、彼女が優しく看病してくれるかなとか……寒くても、抱き締めたら温かいだろうな、とか考えて、激しく頭を振った。



 何を考えているのだ。


 それではただ、迷惑をかけまくっているだけだろうが!



「……ずいぶん依存してるな、僕も」



 ゆっくりと息を吐く。


 再度夜風が吹いた。



 夜空を仰ぐと、やけに白い半月がぼんやりと浮かんでいる。


 その青白さは、病的と言えるほど。



「妙な輝きだ。……気のせいだといいけれど」



 そこで、ようやく踵を返す。



 ――あと少し。



 何があろうと、己の中の獣をねじ伏せるだけ。