静かな月明かりの下、庭に出て、夜風に当たりながら物思いにふける。


 琥珀色の光を見ていると落ち着かないのは体、質だから仕方ないので、最近は眠れない夜を過ごしていた。



 どうせ時間を持て余すなら、彼女のことを考えるようにしている。


 彼女の焦ったり、困ったり、赤くなったりしている顔はかわいい。


 うん、彼女はものすごくかわいい。



 上機嫌のまま考えを巡らせていると、ずいぶん昔のことにまで行き着いてしまった。


 会えなかったとき、京都で思い出していた幼い彼女との記憶。


 とても幸せな時間だったことに間違いはないのだが、途中である問題が発生してしまった。



「最近、名前呼んでもらってない……」



 ……これは深刻な問題だ。