「突然で悪いけど、俺、もうそろそろここを出ようと思うんだ」



 ソファに落ち着くなり、郁人くんがそう切り出した。



「本当に突然ね」


「俺の準備ができたら出て行くって、親父さんとの約束だったろ? もうその時期だって思ってる」


「これからどうするの?」


「親父に会いに行く。ねじれてそのまんまになった問題を解決しなきゃいけない。じゃないと、お互いに後味が悪いし」


「大丈夫?」



 返事の代わりに、郁人くんは力強く頷いた。



「明日行く。もし親父がいなくてもじいちゃんとばあちゃんはいるだろうし、今ならもれなく兄貴もいるんだろ?

 きっちり落とし前つけて、学校に叩き込んでやるから、セラは安心してな」