「……初めてだったんだ。家族や先生以外で、俺のために泣いてくれるヤツなんて。

 自分のこと心配してくれるヤツがいるのに、怖気づいたままなのは嫌なんだ。ちゃんとケリはつけなきゃいけない。

 だから、いつまでものんきに過ごしてるわけにはいかないんだよ」


「郁人くん……」



 そうか……こんなに考えて。


 ゆっくりと息を吐き出す。



「わかった。セラさんに連絡を入れておこう。……君は本当に優しい子だね」


「わっ、先生! 子供扱いすんなって!」



 八神は微笑みながら、しかし頭を撫でる手は止めない。



「誰に似たんだろうね……」


「え?」



 名残惜しい感触を残し、そっと手を離す。