「郁人くん、もう起き上がって大丈夫? キツくはないかい?」
「そのことなんだけど……俺、退院していい? どうせただの風邪なんだしさ、もうすっかりよくなったから」
「……無理はしてない?」
「ははっ、タダ先生は心配症だなぁ。……先生、最近やたら忙しいだろ」
「ああ。物騒な話だけど、暴行事件が多発しているらしくてね。軽傷の人たちばかりだよ。それがどうかしたのかい? まさか……」
「軽傷軽傷って言ってるけど、数がハンパないって聞いた。それで先生も寝不足なんだろ?」
「郁人くん、医者をやっている以上、それは仕方のないことだよ」
「でも、これ以上先生に負担はかけられない。ただでさえアイツに心配かけてるのに……」
「セラさんのことかい?」
ピクッと肩を震わせて、郁人は頬を染めた。