「個人情報だよ。勝手に見ちゃ駄目じゃないか」
「でもおふくろのだよ? っていうか、タダ先生っておふくろも診てたんだ」
「そんな時期もあったねぇ」
「……あのさあ、勝手に見たのは謝るけど、難解すぎて名前しかわからないよ、その文字」
「ならよかった。関係者以外に見られたときのための暗号対策だよ」
「素直に字が上手く書けないって言ったらどうなの? つーか先生もそこら辺に置いとくなよな」
八神は笑った。
この子は相変わらず切り返しが速い。
「職業柄、書き殴ったような字になるのは仕方ない。ここには優秀な人材が揃っているようだから、看護師さんたちが解読してくれると信じて」
「……寝不足なの?」
「医者につきものの不治の病さ。さてと!」
弾みをつけて、立ち上がる。