「――先生! 先生!」
まぶたを上げると、ぼんやりとした視界に人影が映った。
彩子さん? ……違う。
「いくら天気がいいからって、こんなところで寝たら風邪引くよ、タダ先生」
「ああ……ごめんね、郁人くん」
どうやら、机に突っ伏して寝ていたらしい。
カーテンのすき間から射し込む太陽が、眩しい。
「もう、机の上も散らかしっぱなしだし……あれ?」
書類の山から這い出す1枚の紙。
手を伸ばして引き抜くと、郁人はそれを覗き込んだ。
「……『彩子』って……やっぱりおふくろのカルテだ。でも……」
「こら」
「わっ……?」
握りこぶしをコツンと頭に当てる。
郁人が驚いた隙に、カルテを奪い取った。