「帰れ」


「城ヶ崎っ!」



 元気づけたい。励ましたい。

 その一心で声を上げようとした。


 だけど見てしまった。

 城ヶ崎の、苦しみに歪んだ顔を。



「帰れ。……帰ってくれ」



 視線は伏せ気味、声は絞り出すか細さ。


 彼は心の中で叫んでる。


「寂しい。助けて」と。


 だから私は、もう聞き逃さない。



「辛いことがあるなら抱え込まないで。あなたは独りじゃないんだよ。

 郁人くんだけじゃない。私や、若葉くんや、朝桐くんたちだっているの。あなただけが頑張ろうとしないで!」