「じゃあ、どうして迎えに来たの?」


「これから日が短くなるっていうのに、アンタ抜けてるから。宿代だとでも思ってれば?」


《ええと、納得? じゃあ仲良く……》


「できると思いますか、この状況で」



 若葉くんに容赦なく指摘され、上ずった声が聞こえてくる。



《アッ! やべ、もうこんな時間? オレ、今からタ―ジ・マハル付近で有名なチャイの店に行かなきゃならんのでな! 悪いがここら辺で! じゃっ!》


「え、ちょっとお父さ――」



 プーッ、プーッ、プーッ。


 シンと静まり返った校門前に、むなしい音だけが響く。

 通話を切り、無言で差し出してくる若葉くんからそれを受け取って、ため息。



「……帰ってきたら覚えてなさい」



 こうして、長い長い奇妙な共同生活は幕を開けたのだった。