「もしもし、私です。歩美ちゃん? ごめんね、まだ寝ていたところだったでしょう。
たぶん聞いていると思うけど、少し困ったことになってね。そう、郁人くんが倒れて。
せっかく頑張ってくれているみたいなのに悪いね。……あの男から、何もされていないかい?」
問うと、何とも威勢のいい言葉が返ってきた。
「君を信じていないわけじゃないよ。ただ、囮まがいのことをさせてしまったのが申し訳なくて」
それについては大丈夫! と彼女らしい返答があり、ひとしきり笑った後、声のトーンを落とす。
「――2人で決めたことだ。絶対にあの男の化けの皮を剥がす」
もちろん、と返ってきた言葉に目眩がしたのは、疲れか。
そうでなければさすが歩美ちゃんだと、改めて感服する。