「――っ!」
机上の書類が巻き上がる。
せっかく整理したカルテも、窓から侵入した非情な突風のおかげでまたごちゃ混ぜだ。
今は、電子カルテという優れたものがあるのに……昔はこんな風に苦労をしたものだ。
拾い集めようとして、手を止める。
……まったく、見なくていいものを見てしまったと思う。
無意識のうちに出してしまったのだろうか。
少なくとも、それを好んで目の触れるようなところに置く理由が八神にはなかった。
カルテに刻まれた病に対して、どうすることもできなかった。
対抗できる実力を備えた今でもやはり駄目だった。
なぜなら、彼女はもういないのだから。