「郁人くんが倒れたわ! ただの風邪だったからよかったものの……」


「何度も言わせるな。俺とアイツはもう関係ない」


「どうして? 郁人くんとも彩子さんとも、家族なんでしょ?」


「両親に囲まれてぬくぬく育った奴がほざく言葉だな。死ぬなら勝手にすればいいだろ」


「そんな言い方ないんじゃない! 血の繋がった家族なんでしょ? 

 置いて出て行けば、身体の負担が大きくなるのはわかりきっていたはずだわ。だから郁人くんだって残ったのに……」


「……郁人郁人と、お前はそんなに郁人が大事か」


「それはもちろん――!」


「だがお前の言葉で言うなら、親父も『血の繋がった家族』だ」


「……っ!」



 私の目の前には、不自然なくらい落ち着き払った表情がある。