唇を噛み締める。


 本当は、気づいていたんだ。一緒に泣いてくれた、あの夜に。



 ぎゅっとシーツを掴む。



 だから腹が立ったんだ。

 子供扱いして、こっちの気も知らないで抱き締めて、その気にさせるなんて。



 ――拷問か?




「……気づけよ、バカ」




 そうでなきゃ、胸が痛くなるだけなんだから。





「――霧島?」





 現実世界に引き戻された。


 ベッドのそばに人の気配がある。

 でもセラじゃない。タダ先生でもない。


 布団から顔を出し、電灯の光に目がくらむ。


 目が明るい場所に慣れてくると、自分を見下ろしている人物の姿がはっきりとわかった。

 そこにいたのは、同い年くらいの男。