「俺、どうしてここに……」


「高熱を出して倒れたんだ。セラさんたちが君を心配していたよ」


「……セラが」



 オウム返しのように復唱して思い出す。

 アイツに嫌な姿を見せた。

 せっかく心配してくれてたのに。




「……彩子さんのことを、聞いたよ」


「――っ!」



 とっさに起き上がろうとするのを、慣れた手つきで阻まれてしまう。

 やわらかく笑っているけれど、それがこの人の本心かどうなのかは別問題だった。


 悲しんでいないわけがない。

 母とも兄とも仲が良く、誰よりも親身になってくれていたから。