『ウチに来い』
お父さんの言葉さえも、郁人くんには信じられなかったはず。
だけど行き場を失くし途方に暮れて、胡散臭い希望にすがるしかなくなる。
ただ――居場所を求めて。
《セラ、父さんからお願いがある》
いつになく真剣な父の声へ、静かに耳を傾ける。
《郁人を見ていると、昔のお前を思い出して辛くなる。幸い、お前は郁人と隼斗くん、両方と接点がある。だから2人の架け橋になってほしい》
拳を握り締める。
「わかったわ」
今まで人に守られていた。
そんな私が誰かのためにできることがあるなら、私は行動しよう。
《……それでこそ、オレの自慢の娘だ》
誇らしげなお父さんの表情が、目に見えるようだった。