「郁人くん、どこ!?」
すっかり夜になり、街灯が光を灯し始めた。
駅前は様々な店が立ち並び、店内から聞こえてくる音楽に声はかき消される。
道の大部分は薄暗く、すれ違う1人1人の顔を判別するのは困難を極めた。
「……セラちゃん!」
すぐさま振り返る。
若葉くんは陽が落ちてなお途絶えない人波へ、じっと目をこらしている。
「……いた、郁人くんだ!」
「本当!?」
「うん。でも様子がおかしい。…………っ、いけない!」
顔色を変えた若葉くんに手を引かれ、私も駆け出す。
人と人の間を縫うように進み、やがて行き着いた先で聞こえるざわめき。