自分でも、意気地がないことはわかっていた。 呼びとめる声を振り切り、逃げ出すことしかできなかったのは、自分が弱かったからだ。 『大変! また熱を出しちゃったのね!』 ……頭が痛い……。 それなのに、声が脳内で響き渡る。 能天気で優しい、母の声が。 『ちょっと待っててね。すぐにおかゆ作るから』 『……いらない。食べたくない』 『ダーメーよ。具合が悪いんだから、尚更食べて体力をつけなきゃ』