「これ、担任から。多分学級委員の集まりのことだと思うけど」

「ありがとう」

「うん、じゃあ」


簡潔にそれだけ伝え、爽やかな笑みをこぼして、また男子の中に混じっていく後ろ姿。


「やー、良い物件だわ、あいつ。あんた、狙ってないの?」

「いや、べつに」

「あ、狙ってないんだ。じゃあナミ今度あいつ狙おっかなー」

「……はい?」


なんですぐにそういう思考に走るんだろう、と怪訝に思っていると。


「冗談に決まってんじゃん、じょーだん。だいたいああいうの、ナミのタイプじゃないしー」

「……ああ、そう」


パタパタと手を動かしながら、ネイルを乾かすナミさん。

わたしはそれを横目に、ざっとプリントに目を通す。

ナミさんの手から送られてくる空気は、やっぱり甘ったるいバニラのような香りがして。

ちょっときつい匂いだな、とぼんやり思う。


「つか、あの好青年タイプはナミには合わないしー」

「……」


「似た者は似た者同士、引っ付いとけばいいんだよ」