「あいつは、やめといたほうがいい」


不意にわたしに顔を向けて、そう口を開いた。


「遊びには持って来いだし、優しいし、そういうのに慣れてるから超楽しいけど」


チョコデニッシュは食べ終わったのか、袋を丸めながら言う。




「本気になっても、虚しいだけ」



――知っている。

そんなこと、言われなくても分かってる。



「あんたみたいな優等生には不向きだよ」



桐谷は結局、誰でもいいんだ。

寂しさを紛らわしてくれる女の子なら、誰でも。


現に、あのグループの子たちの大半は、一度は桐谷に愛されたことがあるという噂を聞いたことがあるし。


そして、何より。



「……ナミは、本気にならなかったから良かったけど」



目の前の彼女も、愛されたことがあるからだ。