「――通行の邪魔だ」



 静寂を破ったのは、不機嫌な声。



「あ、城ヶ崎! こんにちは……って、おーい?」



 城ヶ崎は朝桐くんの譲った道を、いつもの仏頂面でさっさと通ろうとする。



「城ヶ崎ってば!」



 ギンッ!


 いつかのように睨みつけられ、思わず首を縮めた。

 城ヶ崎はその一瞥をしただけで、何も言わず行ってしまう。



「……なんかすごく怒ってなかった?」


「今日だけじゃないぜ。最近ずっとこの調子だ」


「どうして?」


「親父の再婚相手が気に食わないんだとよ。せっかく美人なのになー」


「……朝桐、あんまペラペラしゃべんなよ」



 いさめるような日野くんの言葉に、朝桐くんは大儀そうな嘆息をする。

 そこにいつものおちゃらけた光景なんてなかった。