ノートとシャーペンを貸してもらい、お返しとばかりに「聡士」と書く。



「だってこれは、『聡明な武士』って意味でしょう?」


「……誰に教えてもらったの?」


「話の流れから推測したの。そんなに言いにくいこと?」


「結構ためらうよ。親の趣味とか遊び心がふんだんに取り入れられてるから。名前負けしたらシャレになんないし」


「負けてないからいいんじゃないの? 沖田総司は京都が誇るヒーローで、若葉聡士くんは私にとって最高のヒーローだよ」


「……セラちゃん、言ってる意味わかってる?」


「え?」


「……無自覚もここまでくると恐ろしいな」


「あっ、またボソボソ言ってる!」



 若葉くんに詰め寄ろうとした、ちょうどそのとき。



「ややっ、あれはもしやセラちゃんでは!」