「テメ、いきなり何しやがる……!」


「お、生きてた。いやぁよかったよかった! わりーな、オレもとっさで手加減できなくてさ」



 目を疑った。

 一体どこに、殴ったゴロツキに笑いかけるヤツがいるというのか。

 ……いや、実際目の前にいるが。



「何サマのつもりだ!」


「おっと」



 ゴロツキが繰り出した拳を、そいつはいとも簡単に受け止める。



「若者よ、威勢がいいのはおおいに結構だが、乱暴はよくないぞ?」



 男は笑みを浮かべているが、拳を掴んでいる手が、ぎしりと軋んでいる。



「っ! コイツッ!!」



 血相を変えたゴロツキは、男の手を振り払う。

 そうしてギロリとねめつけてきた後、舌打ちを置き土産に、きびすを返して走り去った。