「複雑みたいだぜ、アイツんち。人嫌いになったのもそれが原因だって。極端な話、名前呼ばれるのもシャクに障るって言ってたときもあったし」


「朝桐」


「へいへい。そういうことだから、当分話しかけないほうがいい。だいじょーぶ、下手に刺激しなきゃ、やつあたりなんてしないヤツだからさ」



 じゃ、と手を上げて、朝桐くんたちも行ってしまった。



「セラちゃん」


「え? あっ」



 いつの間にか目の前にあった黒曜石の瞳が、私を捉えて逃さない。

 顔を突き合わせるみたいになってドキッとしたのは私だけだな、きっと。