「桜子、今のわかった?」

目の前にはみー君の顔。

私の手の中のシャーペンは止まったまま。

いけない、せっかくわざわざ教えに来てくれているのに…

「今日はなかなか集中できないみたいだね。何かあったの?」

みー君は問題集を閉じて私に向き直る。

なにもない。

何もないのに、こうなってるから自分でも戸惑ってるの。

頭の中はグチャグチャで。

「大和のこと?」

みー君の一言に胸がドキッとなる。

だって当たってるんだもん。

一昨日から大和のことばかりが頭の中に浮かんできて。

「そうだ、今日近くの神社で夏祭りあるじゃん。さく、大和と行ってくれば?」

夏祭り…

普通の付き合ってるカップルなら当たり前にデートとしていくんだろうな。

でも私たちは…

「ほーら、うじうじ悩んでても仕方ないでしょ。そんなままで勉強したってぜんぜん頭にはいってないんだから。気分転換に、な?」