「さーく、そんなに見てたら、キスするよ?」

いつも余裕でたっぷりな大和。

キスなんて何でもないことなのかもしれない。

きっとファーストキスだって、私が初めてなんじゃないだろうし…

練習だからって割り切ってるから、こんなに簡単にキスできるの?

だったら、私だって…

「…いいよ。」

そう言って目を閉じた。

これは練習。

恋をうまくするための、練習。

そうだよ、こんなこと、何でもない。

なのに、なんでこんなに苦しいの?

「さく、泣いてるの?」

いつの間にか流れだしていた涙。

練習なんて、やだ。

こんなの、おかしい。

目を開けると、そこには眉間にしわをよせた大和。

ねえ、大和。

私、大和のこと知ってるようで何も知らないのかも知れないね。

「…なんで泣くの?」

頬に伸びてきたその手は優しくて、なのにそれがまた苦しい。

大和が考えてること、知りたいよ。