誰にも邪魔できない私の場所。

高校二年生にもなってこんなところに隠れるなんて、子供みたい。

こういうところが嫌だったのかな、斎藤くん。

私が生まれて初めてお付き合いした斎藤圭介君。

すみれが丘よりもひと駅先の公立高校に通う斎藤くんのことを電車で見たとき、かっこいいなって思った。

中学から電車通学の私。

高等部に通いだしてから二日後、春休み明けの課題テストの勉強のために読んでいた単語帳を拾ってくれたのがきっかけで話をするようになった。

穏やかで優しくて、どんどん好きになった。

だから告白されたときは夢なんじゃないかって思ったくらい。

それから休日にどこか行ったりはしないけど学校の帰りに一緒に図書館に行ったりお茶したり。

周りから見たら遅かったのかもしれないけど、すごく楽しかった。

すべてのことが私にとって初めてだったから。

外から六時の音楽、『遠き山に日は暮れて』のメロディーが流れだす。