「はあ…」

俺の口から出るのはさっきからため息ばかり。

なんだよ、あの顔。

バクバクうるさい胸を押さえる。

「…可愛すぎだっつーの。」

昔から自分で言うのも何だけど、女から人気があった。

それを自覚したのは小学生低学年のころ。

「ちょっと、大和君は美希のものなんだからね!」

「違うよ!大和君は優奈のものだよ!」

そんな言い争いを繰り広げるませた隣の席の女の子。

だけど俺の視線の先には入っていない。

俺が見ている先にいるのは…

「えー、じゃあ桜子ちゃんのお家ってお抹茶飲めるの?」

「うん、おばあちゃんがお茶の先生なの。でもすっごく怖いよ!」

楽しそうに隣の席のやつと話してる、こいつ。

俺の家の向かいに住む幼なじみ、鈴原桜子。

物心ついた時にはとなりにいたさく。

そして物心ついた時には好きになっていた。

「さーく、鉛筆落ちたから拾って。」

わざと机の端から落とした鉛筆。