でも私は好きだった。

大好きだった。

彼につりあいたくて自分なりに一生懸命頑張った。

今日だって友達のフーちゃんに借りて色付きリップを塗ってみたり。

朝から会えることにウキウキで。

「ま、そういうことだから。じゃあな、桜子。」

そう言うと彼はやってきた電車に乗って行ってしまった。

ホームで立ち尽くし、涙を流す私をみんながチラチラ見てくる。

「うわ、かわいそう!」

「振られちゃったよ…」

もう、やめてよ!

これ以上強くなれない。

こんな泣き腫らした顔じゃ家にも帰れない。

こうなったら…


はあ…やっぱりここは落ち着く。

私がやってきたのは家の近所にある公園。

その中の遊具の一つ、滑り台の下にあるトンネルのような穴。

この穴の中に入ってると、なんだか少しだけ心が落ち着くんだよね。

いつもそうだった。

おばあちゃんの茶道の稽古が厳しくて逃げ出した時もここに逃げてきたっけ。