すべてがたまらなく愛おしい。

「大和…」

その可愛い声も。

キスした時に見せる表情も。

全部全部、好き。


「大和!花恋先輩の告白、断ったのかよ?」

梓がくるりと後ろを振り返り、不満そうな顔で聞いてくる。

「私、まだ大和が好き。」

「ごめん、俺、花恋とは付き合えない。」

公園でされた花恋からの告白。

きちんとけじめを付けたくて言った。

付き合えなくても、幼なじみのままでも。

俺はさく以外考えられないから。

さくしかだめなんだ。

バカみたいにさくが好き。

それだけだから。

「うん、断ったよ。」

「そっか、なら俺は思う存分花恋先輩に猛アタックしちゃお!」

ガッツポーズをしながら言う梓に真と洋貴は半ば呆れ顔。


放課後、すみれが丘の正門の前でさくを待つ。

もうすぐ期末テストだから、数学を教えて欲しいらしい。

なのに約束の時間になってもなかなか現れないさく。