俺がそう言うと花恋はやっといつもの笑顔に戻った。

教室に戻ると、俺の席に誰か突っ伏している。

ブレザーから出ているパーカのフード。

そんな着方をしているのは梓くらい。

「梓、どいて。」

「やだー、大和のバーカ。」

最近なぜかそんなことを言う梓。

「花恋先輩と別れたんだろ?何で話してんの?」

ジトーっとした目つきで俺を見上げながら言う梓。

「まあ、いろいろ。」

「いいよなー、大和は!背も高くて、顔もかっこよくて、ミスターにもなって、可愛い彼女もいるのに!俺にも一つくらいそのモテ要素、わけてよ!」

梓はまた俺の机に突っ伏した。

可愛い彼女か。

こいつは知らないんだな。

俺とさくが別れたってこと。

そもそも本当に付き合っているわけじゃなかったこと。

「花恋先輩、やっぱまだ大和が好きなんじゃねえの?」

それはない、と言いたいけど少しだけ感じてはいる。

だって花恋はめったに弱さを見せない。