「大和!大和!呼んでる!」

休み時間、なんのやる気もおきなくて机に突っ伏していると梓の声が頭上からした。

誰だよ。

のろのろと頭を上げると、教室の扉から顔をのぞかせる小さな影が。

…寝ぼけてんのかな。

一瞬さくに見えた。

さくがここにいるばすないのに。

俺、そうとう重症だな。

「早く行ってやれよ!」

そう言って俺の腕を引っ張る梓の口調はどことなくイライラしているような気がした。

「大和!ごめんね、休み時間なのに…」

申し訳なさそうな顔をするのは三年生の永峰花恋。

花恋とは一年の秋から冬にかけて、少しだけ付き合った。

今までさくしか見えなくて、さく以外の女に全く興味のなかった俺が唯一付き合った女。

理由は簡単で単純。

さくを忘れたかったから。

さくが斎藤ってやつと付き合い始めたとき、きっとすぐに別れるだろうなんて余裕をかましていた俺。

だけど月日が経つにつれ、不安が大きくなっていった。