こうやってすぐに泣いちゃう弱い自分なんて大嫌い。

だから恋愛なんてもうしたくなかった。

あんなに傷ついて、もうやだってなった。

なのに大和が私に教えてくれた。

本当に好きになる気持ち。

大和が教えてくれたんだよ。

恋愛の仕方じゃなくて、恋するって気持ち。

恋がこんなにも苦しくて、辛いこと。

「泣くな!」

パンっと自分の頬を叩くと、わたしは家のなかにはいった。

「桜子、おかえり!返ってきて早々悪いんだけど、これ、速水さんに持って行ってきてくれない?」

リビングに入ると菜箸を持ったお母さんが回覧板を手渡してくる。

「ええっ!?」

「何そんなに驚いてるの?お母さん、今揚げ物してるから目が離せないの。琴子は遊びに行ってまだ帰ってきてないから。ね、お願い!」

お母さんは私に回覧板を押し付ける。

ほんと、タイミング悪い。

大和の家なんて…

私は憂鬱な気持ちでお向かいの玄関に立った。