「彼女は孤独だったんだ。大好きだった親友に見放され、おまけにその親友と信じていた恋人が付き合っていると知り、両親とは勘当している。……誰も彼女を助けてくれない。そんな精神状態が不安定な彼女に、犯罪者に仕向けるようにしたのはお前だろ。……彼女は愛されたことが無かったんだから」
愛されたことが無かった。
だから、彼女は光から頼られるのを"愛"と勘違いしてしまったんだ。
自分を愛してくれる人から求められることを拒んだら、"嫌われる"そう思って拒めなかった。
こいつは、その彼女の純粋な気持ちを利用した。
だが、光は反省する様子もなく、ナイフを詩音の首筋にあてがう。
「んなもん知らねぇよ。俺の知ったこっちゃねぇ。まあ、安心しろよ。この女と、地獄の底で反省してやっからよ」
ニヤッと白い歯をみせたそのとき、パッと薄暗い倉庫に明かりがともされた。
振り返ると、何台ものパトカーと警察官がこの倉庫を囲んでいた。