これが叶亜の本性なのだろう。
「じゃあ、こいつは管理人にテキトーな理由をつけて、葵さんの家に忍び込み、10万円を盗んだ。葵さんはてっきり舞さんの仕業だと思い込んでた。そういうわけか?」
「ええ。それに事件の前日。……阿部さん、言ってましたよね?その日1件の詐欺事件の被害があったって……」
「あ、ああ。80代のおばあさんが10万円を……。まさか!!」
思い当たった答えに阿部は驚きの声をあげる。
ナイフを突きつけられている詩音も答えが分かったのか、目を見開いて叶亜の言葉を待っていた。
「そうですよ。その詐欺の犯人は……舞さんだったんです。どうにかして、彼に10万円を渡さなければ……でもそんな大金、すぐに手に入るわけない。そんなときに思い付いたのが、詐欺だった。」
「全部、山崎光。そいつに嫌われないためにか。」
「ちょっ……待てよ。なんか俺ばっか悪いみたいになってるけど、舞を殺したのはそこにいる葵だろ?」
たしかに一番疑いがあるのは葵だ。
葵は必死に首を横に振る。