「葵さんは舞さんが10万円を奪ったという証拠もないのに、舞さんの家に行って言いがかりをつけた。そこで口論になり、舞さんを突き飛ばしてしまった。で、彼女は容疑者になる。……大まかな事件の流れです」
「へぇ。で?俺は何に関係があんだよ。」
光が鼻で笑う。
たしかに、今の叶亜の説明に光は一度も出てきていない。
しかし叶亜は「これからですよ」とフッと笑った。
「あなたと葵さん、舞さんは幼馴染みだそうですね。葵さんと舞さんはお互い親友だったのに、舞さんがあなたと付き合い始めて、葵さんは舞さんを嫌いになってしまった。」
「……三角関係ってやつか。それからその二人の関係は悪化したわけだな」
阿部の呟きに叶亜はうなずいた。
「舞さんは言わば社長令嬢。庶民と付き合うなどもっての他。あなたみたいな暴走族の一人なんて論外ですよ。もちろん、両親も相当反対したはず。……でも、彼女は自分を好きだと言ってくれた人を振ることができなかった。……両親に勘当されてまであなたと付き合った」
「そうだったんだ。知らなかったよ」
光はクスッと笑い、詩音の首筋に突きつけるナイフに更に力をいれた。