「……葵」
弱々しく詩音が呟くと、葵はそれに反応して詩音をいちべつした。
「……さてと。役者も揃いましたし、始めましょうか。この事件の推理ショーを」
雨音がさらに激しくなる。
重い空気の流れる倉庫。
「まず、事件の整理から。始まりは、葵さんとそいつが僕のところに相談にきたことからだ。彼女の依頼内容は、舞さんが自分の貯金していた10万円をとった。何とかしてほしい……そういうものでした。」
「警察に言えば済んだろ」
阿部が怒ったように葵をみた。
葵はビクッと肩を震わせるが、何も言わずにそっぽを向く。
「彼女は警察に言うつもりなんて無かったんですよ。……ただ、舞さんのせいにしたかっただけですから。自分の大好きな人を奪った人にやり返したかった。そうでしょ?」
叶亜が反応をうかがった。
葵は無言でうつむいている。